2009年05月13日

EECA(仮)・桜4

なんか半月ほどさぼってますた。

というか……GWって、忙しいですよね。
本当に自宅でのべーとでけたのは、2日かそこら。あとは何だかばたくたしてますた。

それにあみぐるみは、ようやくロシアさんがでけただけで、まだイタリアさんがでけてないし。

というわけで(え?)
続きです。

 
  以前、指導教官が言っていたことがある。
(喜納さん。こういう仕事はね、何一つ成果が無くても報告書が書けないといけないんだよ)
 それは、教官(というか助教授だな)が請け負っていた仕事の手伝い(つまり、それがこちらの修論になったのだけど)をしているときの話だった。最初の目論見で結果がでるかと思われた手法が上手くいかなくて、じゃあ別の方法を試さないと、どうしよう、と二人で頭を抱えていた時のことだ。
(出来ないなら何とか逃げ道を作らないと)
 まあ、結局、二つ目の解析方法で欲しかった結果が出てきたので、結果オーライだったし、結局そこで学んだ技術がきっかけで、ここでこうして仕事を貰っているのだけど。
(何でもいいから、報告書を埋めるのが必要なんだ、こういうのは)
 つまり。今回のような場合にも。


 困りましたね、と、田崎さんは溜息をついた。
「予測以前ということですか」
「はあ……」
 確かに、この状態で予測ってのは余りにもちょっと問題というか不正確というか、もう殆ど当たるも八卦当たらぬも八卦というか。

「吹利県外で、こういう被害が起こりそうな場所っていうのを突き止めるのは」
「桜の樹の下、としか判らないです、これだけじゃ」
「……そうでしょう、けど」
 それじゃ困るんですが、と、溜息をつく。
 そりゃあそうだ。何となく話が見えないから、ついつい暢気に構えてしまっているけど、これってつまり、桜の季節になれば必ず人が死ぬ、ということじゃないか。
「それは……怖いですよね」

 しかしまいった。被害ってのは拡大するものだとは思ってたし、桜鬼の被害ってのも例に漏れずだとは思ってたけど。
「学習早いですね」
 何だかしみじみと、片帆さんが言う。
「学習?」
「そう。一度ここで樹を切ったって言いませんでした?」
「言いました」
 そう書いてある。
「だから、多分……見つからないところに逃げた」
「……うあ」
 そう考えると、すごく怖い。

 桜。ソメイヨシノ。樹種としてはかなり特異な種。種が実らず、挿木などでしか増えることのない種。つまり、現在存在するソメイヨシノは、全てクローンである。
 もし桜鬼というのが、その樹種特性をやはり引きずるのだとしたら。
 もしかしたら、桜鬼もまた……クローンだったり繋がりがあったりするのだろうか?
 異能者が多いだけに、刺激の多い(かもしれない)この吹利で学んだことを、他の地域の桜鬼に伝えたりするのだろうか?

「……質問」
 考えていたら、何だか足元からぞっとしてきたところにその声だったので、何だかほっとして振り返った。
「被害者が亡くな……いや、行方不明になってから、見つかるまでにどれくらいかかっている?」
 さらさら。細かく砕いて砂状にした硝子のような声は馨さんのものだ。
「どれくらい……って」
「例えば、ここからここまではどれくらい?」
 伸びた指が、吹利と秋田をつつく。
「あ、ちょっとま…………2日です。それも、発見された時の状況から、恐らく発見前丸一日は、ここにあった、と」
 秋田の白神付近は、四月でもまだ雪が残っている。そこにさらされた状態から、どうやらそういうことが判ったらしい。
「とすると、一日以内に運ばれたってことになる」
 それは確かに。
「……どうやって?」
「ん?」
 頷いていた片帆さんが、ぴくり、と眉を動かした。
「桜鬼って、人間一人を担いで、一日で吹利から秋田へ走ることができるんだろうか」
 京都と奈良の間にあるこの県から、本州北部へと。
「まさか自動車運転はしないでしょう」
「しないでしょうね」
「やっぱり、テレポーテーションみたいなものじゃないでしょうか。一応あやかしだし」
 自分の異能だから、無論あやかしが持っていても不思議はない。そう思って言ってみたが。
「……どうかな」
 馨さんは首を傾げる。
「それだけの異能があるなら、日本の森林は、今までにもっと過激な方法で森林破壊を止めているんじゃないかな」
 それは、そうかもしれないけれど。
「他の場所は?」
「ええっと」
 もうちょっとはっきりと時期が判っているものがないかどうか、ページをめくる。
 と。
「……あれ?」
「ん?」
「こっちは……3日だ」
 2年前だから、このデータの中では最近になるだろう。無論、見つかるまでのタイムラグがあるから、そこらはなんともいえないが。
「近いよね、これ」
 紀伊半島の半ば。まあ……地上から行くことを考えても……確かに紀伊半島の中央って山の中だからかなり大変だとは言え……秋田よりは近い。
「行きやすい場所と行きにくい場所は、ありそうだね」
「……成程」
 それまで黙っていた田崎さんが、妙に期待しまくった声を出す。
「次善の情報として、それは確かに有効ですね」
「えーー」
「えって何ですか」
「いや、その、理由が全くわからんのが」
「それを調べるのが仕事ですよ」

 ……いやそーなんですけどね。
 確かに普通、解析をするのに、その理由……ちゅか目的変数を考えるってのも大事な手順なんですけどね。
 でもさあ。
 普通、こういう場合、前例に頼る場合が多い。植物に関わる気象の指数だと、例えば有名どころではWI。温量指数、という奴なんだけど……つまり、『有名どころ』だのなんだのといえるくらい、前例があって、それをこちらはひっくり返しては適当な組を探すことになるわけだ。
 無論、前例が無い……というか、前例にあるような変数じゃあ説明できないことはある。でも、その場合は、研究対象地に行ってみたり……まあ、なんつか、自分でそれなり調べて判断することになる。

 だけど。
 今回は……だって桜の鬼についての研究なんて無いわけだし。
 研究対象ったって、こちらは桜の鬼なんてもののこと、知りゃあしないわけだし。

「手がかりらしいもんが無いんですけど」
「そういう場合は、現場百辺でしょう」
 ……うあ、言い切られた。

「というわけで。午後からでいいですから、皆さんで、一番近くの現場に行ってみて下さい。こちらはその間に、ガーゴイルとピーピングトムへの登録の準備をしておきますから」
 にこやかに、あくまでにこやかに。
 田崎さんは言い……そしてあたし達は、頷くことになった。

 そりゃなんたって、相手は上司なんだし。

posted by 片帆 at 00:22| Comment(0) | TrackBack(0) | EECA | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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