2009年04月05日

EECY吹利分室(仮)その3

 ちうわけで、続きを毎度書いてます。
 文章って毎日書かないと退化しますね。

 ……なんかこう、あれだ、白の女王の気分です。
(走らないとこの場所に居られないのよ……ってなもんで)

 ちうわけで。


 *************

 世界には奇跡が満載なんだよ、という人がいる。
 奇跡なんて錯覚だと、断言する人も居る。

 どちらが正しいかなんて知らない。でも、実際に現象Aの次に現象Bが来て、それが一見、今の常識に合わない場合、これをどう解釈するかは、実はかなり個人の勝手になるんだと思う。

「有難いことに、これを『なんて偶然だ』と解釈する人は多いんですよ」
 我等が上司の田崎さんは、にこやかに言う。
「あやかしだ、妖怪だ、超能力だ、なんて解釈はしないまま、ね」


 吹利県。
 妖怪あやかし異能者の割合が異常に多く、そのため警察機構には『対異能者(人間、妖怪含む)担当』の部署があるようなこの県ですら、実はこういう強固なる常識は蔓延している。だもんだから、既に述べたようなことってのは、実は自分だって、この部署に雇われ、配属されることが決まる前の面接の時に初めて知らされたようなものだ。
「そりゃあ一般の人は知りませんよ」
 どうして自分のような、一応……異能者側に属する者ですら、こういう部署があることを知らないのか。尋ねると田崎さんは当たり前だろう、と言わんばかりの顔をした。
「そりゃ確かに、うちの県にはそういう面々が多いです。多いですが……そうですねえ」
 うむ、と考え込んで。
「東京で、石を投げたら東大生にぶつかりますか?」
「……なんですかそれ」
「じゃあ、大学生にぶつかりますか?」
「……可能性として、ちょっと増えたと思いますけど、ぶつかりますって断言できるほどじゃないと思います」
 そうでしょう、と、田崎さんは頷いた。
「今のところ、吹利県に於ける異能者の割合は、その二つの値の、まあどっか半ばにあるんじゃないかと思われてます。石を投げてもぶつからない。その程度しか居ないんですよ、実際には」

 それでも、その少数である筈の異能者達を相手に、『環境』に関わる部署にこんな分室が出来た理由は単純である。
「そういう問題が、現在起こっているからですよ」
「と、言いますと、温暖化の為に環境が変わったか何かで」
「温暖化じゃないんですがね。それで狐の眷属達と、一触即発状態になりましてね」
 何でも、バブル崩壊前に酷い開発を行った場所が、バブルがはじけた後放置されたままになり、それで散々荒れてしまったそうだ。そこは元々狐達の守っていた地域だったが、当然その狐達の護りも無くなり、結果悪しきものを呼び込むような格好になったらしい。開発したほうは今更ながら、その狐の護りを戻して欲しいと言ったらしいが、まあ当然、狐のほうはそれを拒否する。そのことでかなり揉めている最中だと言うのだ。
「え、じゃあ、それを仲裁なりなんなりするのが仕事ですか?」
「まさか」
 てっきりそういうことかと思ったのだが、田崎さんはあっさり否定した。
「そんな大変なことを、こんな出来立ての部署に任しませんよ」
 それに、そうやって実際に問題になってしまえば、後はもう零課の仕事の範囲なのだと言う。
「じゃ、我々の仕事って何ですか」
「ですからね。そういう問題になりそうな場所を、先に指摘出来ればそのほうが良いじゃないか、と」
 そりゃあそうかもしれないけど。
「でもそれって……温暖化関係ありますか?今の話だって、乱開発がきっかけでしょう?」
「今のところ、直接関係は無いですね」
 ……おい。
「でも、そうやって一言入れておくと、何となくみんなが納得するんですよ」
 それで良いのか、それで。
「それに、ちゃんと、『温暖化を含む環境の変動に伴い』としてありますのでね。環境の変動に関係するなら何でも良いんです何でも」
 にっこり笑った学者顔が、一瞬『悪の研究者』に見えたのは……気のせいだと思いたい。

                 **

「きーなーさん、きーなのおねえさんっ」
「あ?……ああはいはい、何?」
 で。まあそんな風に出来た分室に居るのは、現在、田崎さんと自分を除くと、あと3人である。
「喜納のおねーさん、珈琲もらっていーですか?」
「ん?あ、まだあるならどうぞ。いいよ」
「あります、ありがとー」
 元気良く言うのは、この分室の最年少の、今宮タカちゃん。現在13歳である。
「あ、砂糖はまだあったっけ?」
「あります、だいじょぶです!」
 いや、正直、そりゃあ無いだろと自分も思う。幾らこの分室向きの異能者であっても、13歳の子を雇うってのはどうよ、と。尋ねると田崎さんはいやいや、と、手と首を横に振った。
『そうじゃないんです。彼女は……正確に言うと、保護されていることになってるんです』
 親からの虐待、そして親族も彼女にとっては危険であった、ということで、一旦彼女は零課の警官に引き取られたのだという。ただ、そこも色々あって引き払うことになり、引き取った相手がここで働くことになった為、じゃあ、日中彼女を保護する為にも、とここに来ることになったらしい。
「片帆のおねえちゃんは飲みますか?」
「あればね。余ってる?」
 その、引き取った相手というのが、今カップを差し出した片帆さん。軽部片帆さんという。
「馨のおねーさんは?」
「ああ、私は先に貰った」
 そして、タカちゃんの声に、やっぱりどこか無表情に応じるのが馨さん、こと六角馨さん。六角で『むすみ』と読むとは知らなかった、というと、貴方の姓も『きのう』じゃなくて『きな』と呼ぶとは知らなかった、と打ち返された。

『でも、女性ばっかりなんですね』
 ここでの仕事が決まった時に、ふいっと言ったことがある。何とはなしの言葉だったのだが、田崎さんはかなり深刻な顔をした。
『いや、実はね。貴方の前に2人ほど面接をしたんです』
『はあ』
『男性なんですけど……一緒に働く面々を見て、やっぱり止めておく、と』
『は』
 そんなに怖い人達なんですか、とまさかに問えはしなかったのだが、田崎さんは小さく肩をすくめて、口には出さなかった質問に答えた。
『迫力が半端じゃなくてね』

 物事を控えめに言う才能って凄いと思う。あらゆる意味で。

             **

 というわけで。
 ようやく面々の名前が出てきましたが、問題の一人称の彼女、まだ名前が未定です<おいまてや(あ、本当に、喜納で、『きな』さんという姓はあるそうです。六角もね)。

 では今回はここまで。
 そろそろ、話が始動し始めます。
posted by 片帆 at 00:25| Comment(0) | TrackBack(0) | EECA | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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