2009年04月04日

EECY吹利分室(仮)その2

というわけで、話書いてます。
何か……楽しい。

というわけで。

***
 さて。
 先程さらっと流してしまったが、この吹利県には、データベースにしたいくらいのあやかしやら妖怪やらついでに中二病者の夢のような異能者やらがいる、ということを、まず説明したほうがよいかもしれない。
 というか、この文章を読んで、さぞや吹利県というのは恐ろしい場所だ、治外法権のようなところではないのか、などと思われると困る。実際にはかなり厳しいバランスの上に各勢力が立って、それぞれを牽制している状態であるらしい。
「一応ね、彼等にとってもここは避難場所のようなものなんですよ」
 おっとりと説明してくれたのは、この分室の唯一の常勤職員かつ上司の、田崎さんである。
「また、力を暴走させてあちこち荒らそうとするのは、こういっちゃ何ですがやっぱり若手に多くてね」
「……人間と同じですね」
「基本変わりませんよ、そういうところは」
 例えば吸血鬼なんか判りやすい。彼等が人の血を吸う、これは……まあ、推奨は絶対されないが、どうしても必要な場合、相手の記憶を取るなりなんなりし、かつ致死量を吸わない、とするなら、まあ片目をつぶって見過ごされるらしい。しかし、必要でもないくせに血を吸い、相手の意思を縛り、とやりだすようだと、同じ吸血鬼が阻止するらしい。
「人間なんかどうでもいいって思ってないんですか、そういう面々って」
「そう、公言する連中は多いです」
 額は広く、頬から顎にかけて少しこけたように見える。典型的な学者顔のこの上司は、さらさらと言った。
「でも本音としてはね、人間がやはりこの世界の主流なんですよ。人間が滅びたら、楽しみにしている本も読めない、漫画も続きが出ない、なんて言う連中だって居るんですから」
 ……流石は偉大なるオタクの帝国たる我が国の妖怪達である。
 それでも無論、こういう異能者(人間妖怪ひっくるめ)が事件を起こすことはある。だから、対異能者の事件を扱う県警零課というのがちゃんと存在している。
「それにね。はぐれの異能者については、発見されたら即、登録されるようになってます」
「登録、ですか?」
「ええ。どういう能力があるのか、どういう能力が無いのか、なんてことをね」
 かけている眼鏡のつるをさぐりながら、田崎さんは苦笑した。
「だから、貴方に連絡したんじゃないですか」

 そう言われると返す言葉が無い。小学一年の、学校に行き始めた途端、異能をばんっと使って見つかって、注意をされた……というのは、まあ、子供のことだからとはいえ、今から考えると相当恥ずかしいことで……ちょっとこう、思い出すとごろごろ転がりたくなるのだ。
 小学一年の時。朝は集団登校だったのだが、どうも朝が苦手な子供だった自分は、集団登校に毎度間に合わなかった。その代わり学校に向けて瞬間移動してたんである。
 それが見つかったのは3日目。見つけてくれたおばさんは、学校の保健室を借りて、懇々と話してくれたのである。歩くというのは大切であること、そうやって一人で登校していると仲間はずれにされることもあること、いざという時以外は、そういう異能を人に見つかるように使ってはいけない、ということ。
 小一の、まだまだ子供だった自分は全く恐れ入っておばさんに謝り、以降、この力を人にばれるように使うことは無くなった。

「なんにせよ、貴方のような能力は、この分室には不可欠なんです。見つかってよかった」
 うんうんと頷いて言われたけれど、正直こちらにはその理由が判らなかった。だってそういう、妖怪だの何だのを研究なりなんなりするなら、もうちょっとこう……アレですね、退魔の術とかそういう……ええ、そういう系統の力のほうが良いんじゃないですか、と(そこ。なんつう恥ずかしいとか言わない。訊いた自分も相当恥ずかしかった)。
「そんなことはありませんよ。貴方の異能はとてもとても貴重です」
 真顔で言った田崎さんは、しかし次の瞬間、とんでもないことを付け加えてくれた。

「だって、貴方達非常勤の人達には、出張手当が出ないんですからね」
「…………はあ?!」


 吹利県では、異能者は、珍しいものではない。公的機関に、対処する為の部署が特別に組まれるくらいに珍しくない。
 従って、ある意味非常に……即物的に扱われる、らしい。
 いいんだか、悪いんだか。

posted by 片帆 at 00:20| Comment(0) | TrackBack(0) | EECA | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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